金融庁は、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」をまとめた。
これは、金融審議会「市場ワーキング・グループ」において、平成30年9月より、計12回にわたり、「高齢社会における金融サービスのあり方」など「国民の安定的な資産形成」を中心に検討・審議を行ってきた結果。
報告書の中では、平均的な収入・支出の状況から年代ごとの金融資産の変化を推計。男性が65歳以上、女性が60歳以上の夫婦では、年金収入に頼った生活設計だと毎月約5万円の赤字が出るとはじいた。これから20年生きると1300万円、30年だと2千万円が不足するとした。
[コメント]
恐らく、2019年度上期で最も注目される事になるであろうFP関係の数字。マスコミが取り上げ、2000万円という数字が一人歩きして、様々な批判が出た。また、報告書が後に撤回されるなどの異例の措置にも繋がった。
国民に対して資産形成に関する問題提起をしたという意味では、意義深い報告書であったと言える。これを機に、日本でも資産形成に関する関心が高まる事を期待。
高齢化の進展などを考えれば、こうした問題提起がなされる事は重要であり、また、自然。ただし、国民が以前から不安に思ってきた年金問題に対して切り込んだ為に、大変な物議を醸したと分析できる。
なお、この数字を念頭にした相談が増加する事が予想されるが、この数字は、あくまで、「一つのモデルを想定したシミュレーションの結果の数字」であり、この数字ありきで対策を講じるべきではない事に留意。
退職時に必要となる金融資産の金額は、相談者ごとに全く異なる事を理解して頂く必要あり。また、退職年齢、年金の予想額なども相談者によって全く異なり、個々にシミューレションしない限り、不安を解消する為の対策は開始出来ない。
更に、老後の必要資金自体についても、相談の結果、削減できる余地あり。
なお、報告書の数字を強く意識した相談者に対しては、話題となった数字が掲載されているのは、この報告書の一部分に過ぎず、世帯の実収入209,198円と実支出263,718円(うち、消費支出235,477円)と計算された結果の差額である事を説明し、実際の相談者との差異を考えて頂くアプローチも検討出来る。
[データ日付]
2019年6月発表
[データ元]
金融庁
※ただし、本記事のタイトルなどはマスコミが取り上げた論調に近いものを採用。
[関連URL]
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf
同 資料
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/02.pdf
金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html
日経新聞 人生100年時代、2000万円が不足 金融庁が報告書
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45636720T00C19A6EE8000/